ようこそ拙宅の劇場へ。イラストは2号館へどうぞ。

郵便局(メールフォーム)



いくらでも引けます

bot収録歌401~

一歩も外に出たくない

 

でも出ないといけない。楡の短歌bot@ronire_log)の収録歌一覧続きです。401首目から。500首行ったら次のページに移ります。随時更新予定。

※ざっくり登録順に並べてあるだけです。見づれ~

※気づいたんですがこれ上の方が登録新しいですね。まあいいか

 それではどうぞ。

 

動物に例えるならば蛇、白い蛇、祀られず死ぬ白い蛇


ゼアズ・マイ・スイート・リトル・ピルケース ざらざら笑うあの子のことが


錠剤を押し出すように話すひとやさしい水をあたしにくれる


戻りたい戻りたくない戻れない蛇口ひねればどくどくと泣く


生きているだけでぼろぼろいつだってバターナイフはバターの隣


忘れたいことのすべては行き止まる あしたドリッパー叩き割ろうね


歩いても歩いても道 満喫のティッシュつぎつぎ差し出されゆく


ティーバッグひたしては上げひたしては上げあたしたちもうさよならね


傷 そっとのぞかせる時てらいなく「あとティラミス」とメニューを閉じる


幸せになりたいだけでいてごめん まだ痛いから滴がほしい


冷めちゃうとおいしくないよおいしくないものはたいてい醒めてるんだよ


決めるのはいつも君だね 玄関に立てたブーツもしずかに折れる


右がソで左がラって耳鳴りの話をしたろ。星が見えるぜ。


消えていく音。
(×××××、)
消えていく声。
(──×××××!)
消えていく、
君、


だめだよ  シャワーの音は目立つからまだだめ(わるいひと)おいで こっち


ピアス 赤 あれは誰のと訊けないで明け方いつもあたしがわるい


のぼる雨のぼるあたしは加速して加速して加速して加速し


雨の降る環状線をかたむけて終わりの音を聞いてみましょう


サン・キャッチャー 虹ばかり降るキッチンで焦げつくきみと何度でも会う


おれの眼を灼く青になれなにいろの血がなにいろに焦がすおまえだ


ここにいていいんですよね光つよく青く届けてここにいるから


光るのをやめて地表に落ちた時あなたが枯れた海だったこと


だからって枯れなくていいうすぐらくつかむ吊革うすぐらいまま


横たわる菜箸に蠅 あしたにはすべてがうまくいくはずだから


生まれても生まれても夏まなうらのやわらかい脈あかくさい蠅


シナモンの効いた春ですあちこちでおもいおもいに生まれるタルト


パレットが雪をかぶったままだけど春の納期は近づいている


アイシャドウパレットに罅こなごなになってしまったあたしも蝉も


日曜日。パパのスペース・シップから鬼電。「マーク、セミを仕込むな」


丁寧なくしゃみのように君が言うスパゲッティ、の響き 日曜


ころしたいほどでもないね冷え切った手はていねいにささみをほぐす


名を呼べば伸べられる手があることのおそろしさどこからが冥界


集めても落とすばかりだ罫線をあるく後ろに詩と名をつけて


花という花を集めてかんむりにして君という君にあげよう


花、でかいプランター、土、バラバラにするやつ、埋めるやつ、あと洗剤


埋められるまでのつかの間トランクで鉄の香りを楽しんでいて


バカ、ずっとそばにいるって言ったでしょ。今トランクに載せてあげるね


おれたちはばからしくっておおまぬけ駐車場にものぼる半月


どんな水も涙に変えてやれるからおれによこせよいくらでもいい


どんな味だろうと思うあの水はあのこのいない市営プールは


毒林檎味にしたけど毒はない殺さないから眠ってほしい


はじめての巧詐でしたね 街なみはまだきみがいるように眠って


そこにある声そこにある歌そこにある街そこに沈みゆく日々


会いにいくために燃やした日曜日こよみの赤の灰になるまで


忘れ物などはひとつもしないひと たしかに置いたまま帰る傘


ゆるしてよゆるしてよって泣いている鼓動をあやすように衣擦れ


雨ばかり聴こえる部屋で雨ばかり聴きながらまだ聴きながら まだ


背表紙をなぞる手つきでひらかれるわたしのなかを駆けゆく魚影


ふくらんで狂うわずかがもどかしいあなたあるいは鍵盤のこと


まぐわえば融けてしまうね 飲み干せばぬるい氷に輪郭がない


「夏はもう死んでしまって退屈でぼくらに蚊など飛ばして遊ぶ」


はつなつのインターホンはくぐもってゆうべの熱のこごる厨に


つかまえてきましたけれど死んでいる閉じた指から雫 赤いね


「二足でもサンダル、三はなんだっけ」「三匹だって子豚は子豚」


この雨を月の涙と呼びましょう むかつくなんかぜんぶきれいで


「あなたから既読をもらう時いつもアルトの声の小鳥が鳴くの」


弓という弓うならせてぼくたちは射抜きあっても硝子の歩兵


声だけは届いています見えずともそこにいる星ひらかれる窓


ほどいたらさらさら消えてゆくだけの小指の糸をこわがる僕ら


病棟は南に向いて明るくてテレビ・カアドを買ってこようか


寒くない寒くないよと何度でもストーブしまい直す六月

 

--------------------

 

次の100首はこちら↓

 

前の100首はこちら↓

 

itismessyhere.hatenablog.com

 

しばらくあんまり詠めない気がするので感覚が鈍りそう 今後ともよろしくお願いします~